国内

1万人の反橋下公務員 子どもに不起立を促すかと関係者懸念

「君が代不起立」の厳罰化を目指す橋下徹・大阪市長に対し、一部教職員が猛然と反旗を翻している。春には修羅場と化しそうな大阪の現場を、ジャーナリストの鵜飼克郎氏がレポートする。

 * * *
 1月16日、東京都の公立学校の教職員ら170名ほどが「君が代不起立」により戒告、減給、停職の懲戒処分を受けたことの取り消しを求めていた裁判で、最高裁が、戒告は全て合法だが、停職2人のうち1名と減給1人については処分を取り消す、という判決を下した。不起立を繰り返しても簡単には減給、停職にはならない、ましてクビにはならない、というわけである。

 ちなみに、1人の教職員が停職処分を取り消されなかった理由は、日の丸を引きずり下ろすという、式典に対する明らかな妨害行為があったからだ。ちなみに、この教職員は以前詳報した「不起立のジャンヌ・ダルク」である。

 最高裁のお墨付きを得た不起立派は息を吹き返した。ある現役の府立高校教員が話す。

「翌日以降、不起立派の教員が判決を伝えるビラを他の教員の机に配り、頻繁にミニ集会を開き、駅前でのビラ配りを再開しました。減給、停職、免職は生活に響くので嫌だが、戒告なら痛くも痒くもない、というのが本音のようです」

 逆に、「違反者を自動的に減給や停職の処分にすることはできない」として、橋下氏は教育基本条例案を修正する考えを表明した。大阪府知事の松井一郎氏も同様だった。

 ダブル選挙を控えた去年の11月20日、『しんぶん赤旗』が〈「君が代」の伴奏を強いられた音楽教師は、ストレスのあまり胃から出血し緊急入院。動脈の8カ所で止血を施すほどの重症でした〉と書き、大きな話題を呼んだ。

「しかし逆に、君が代を伴奏する音楽教師が不起立派から嫌がらせを受け、鬱病になってしまったケースもあります」(前出・元府立高校校長)

 同様のことがまた起こらないとも限らない。

 さらに、かつての門真市立第三中学校のケースのように、生徒を巻き込んだ不起立騒動が再発する可能性がある。

「市営バス、水道、清掃事業といった現業部門の職員に対して、橋下市長が『採用経緯を明らかにし、問題があれば再試験する』『給与を民間並みに下げる』という方針を打ち出したことへの反発は強い。1万人強いる彼らが府立学校に通う自分の子どもに不起立を促すことも考えられます」(教育委員会関係者)

「当日、校門前でビラを配り、会場に横断幕を掲げることも考えられる。子どもたちの門出が過激な行動で汚されるのではないかと心配する声がある」(前出・府立高校教員)

 しかし1月30日、維新の会側は、現場の教職員も強く反対していた、知事による教育目標設定権と教育委員罷免権を事実上盛り込んだ教育基本条例案を教育委員会側に認めさせた。2月下旬開会の府議会、市議会にそれぞれ提出するなど、攻勢を強めている。

 ちなみに、本誌の取材に対し、大阪府教職員組合、大阪教職員組合はともに「ノーコメント」。

 君が代起立斉唱を巡る大阪春一番は、どうやら大荒れ模様となりそうだ。

※SAPIO2012年2月22日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

中居正広(時事通信フォト)
【独占】中居正広「謝罪コメント」に被害女性“X子さん”が思いを告白「私の人生は元には戻らない、それだけです」
NEWSポストセブン
第49回報知映画賞授賞式で主演女優賞を受賞した石原さとみ
石原さとみの夫が経済紙に顔出しで登場 勤務先では幹部職に大出世、複数社で取締役を務め年収は億超えか 超スーパー夫婦の‘秘策”は瞑想
女性セブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現(写真はイメージです)
《独占告白》「こたつに入ったクマが食べたのは…」年末に自宅を荒らされた家主が明かした緊迫の一部始終「チョコレートやみかんには手を付けず」「小さな糞がたくさんあった」
NEWSポストセブン
お店の前で合流する永瀬廉と西畑大吾
「だいれん」キンプリ永瀬廉&なにわ男子・西畑大吾が“決起集会” 1月期ドラマで共演、仲が良すぎて“ムズすぎる”場面も
女性セブン
1月7日放送の『ザ!世界仰天ニュース』では中居正広の出演シーンが全カットされていた(番組公式HPより)
《高視聴率記録》中居正広出演シーン全カットの日テレ『仰天ニュース』、“MC不在”の4時間に編集した制作サイドに業界内で上がる「すごすぎ」の声
NEWSポストセブン
小説家の葉真中顕氏(右)と新刊『将棋で学ぶ法的思考』(扶桑社)が話題の法学者の木村草太・東京都立大教授が対談
《2025年の将棋界を予測》藤井聡太七冠の圧倒的強さの秘密 対局相手を絶望させる「2度負かされる」の意味、負けた棋士が調子を落とす「藤井イップス」も
週刊ポスト
元「ANZEN漫才」のみやぞん(Instagramより)
《5500万円のロールス・ロイスを買いたい》みやぞんが“金持ちキャラ”に激変 「ANZEN漫才」解散後の相方は月収は850円で「広がる格差」
NEWSポストセブン
来る3月、大谷翔平が日本に凱旋
大谷翔平、日テレが生中継する開幕前の壮行試合に“出場拒否”の可能性 依然として尾を引く「新居報道騒動」
女性セブン
けがの前と変わらない立ち姿を披露された美智子さま(2025年1月2日、東京・千代田区。撮影/JMPA)
美智子さま「杖をつかずに一般参賀に参加」の目標を見事に実現 宮内庁病院は看護師2名の追加採用を決定、“快復のカギ”となるか
女性セブン
450日以上にわたって拘束され続けているリリー・アルバグさん(イスラエル大使館の公式Xより)
《停戦合意を前に19歳女性の人質動画を公開》ハマスが450日にわたり拉致・監禁「性奴隷」と呼ばれ…深刻な肉体的苦痛の実態「もう私たちが知っている彼女ではない…」
NEWSポストセブン
女性との間に重大トラブルを起こしていたことが判明した中居正広
「田原俊彦、植草克秀を収録済み」中居正広『だれかtoなかい』が早期打ち切り危機…空白埋める「毒舌フリーアナ」
NEWSポストセブン
2024年12月13日の事始め式では青いストールを巻いて現れた
《六代目山口組・司組長のファッションに注目集まる》原点は「チョイワル」コーディネート、海外高級ブランドを外商で取り寄せ、サングラスは複数用意して全身グッチ
NEWSポストセブン